日本人エンジニアのためのアメリカ就職マニュアル
1. 履歴書
履歴書は就職活動を勝ち抜くのに最も基本的で重要なものだ。最終的には複数回の面接を潜り抜けるレベルの実力がなければ内定を勝ち取ることは出来ないが、きちんとした履歴書を作成しなければそもそも土俵に立つことすら出来ない。履歴書作成には全エネルギーを投入すべきである。日本では履歴書は事実ベースの無味乾燥な代物でしかないからさほどissueにもならないが、ここアメリカではその重要性は広く認知されている。適当な履歴書を書いても就職にあり付けたという人は、もっと気合いの入った履歴書を書いておけばもっといい仕事に巡り合っていた、と思った方がいい。履歴書の良し悪しは、この先の進捗に多大な影響を与える。一例を挙げておくと、俺の場合在学中に中途半端な履歴書を作成し、求人サイトMonster. comにアップしたところ、2008年10月から2009年6月迄の8ヶ月間で雇用主、リクルーターに計86回参照された。一方、卒業後に3週間もの時間と労力をかけて作成した履歴書は2009年7月から10月迄の3ヶ月間で計200回参照された。後に述べるが、自分が応募した企業からのレスポンスよりも企業がオンラインで履歴書を見つけて連絡を取ってくる方が圧倒的に多い就職活動の中で、履歴書がどれだけ参照されるかというのはとてもクリティカルな話だ。参照回数が多ければ多い程、企業やリクルーターからの連絡が多くなり、必然的に機会が増大する。そして、履歴書が人の目に留まるようにするには(検索にヒットするには)、書き方に戦略が必要だ。ここでは俺の実体験ベースでどうやって履歴書を完成させたかを書くことにする。
1-1. 履歴書の書き方
最初に、気合を入れて作成した最終版を見せる。
(学校名、会社名、プロジェクト詳細は全て事実と異なる。)
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次に、最終版に至るまでの経緯を説明する。
1-1-1. ドラフト作成
作成の仕方にあたって、ぐぐれば大量のアドバイスがヒットする。しかし、俺達のような履歴書の素人はこれらにさほど注意を払わなくていい。俺らは英語が上手くない上に、どう書けばよいのかをそもそも知らない。だから完璧なものはハナから書きようもない。自分でトライしようとするだけ無謀だというものだ。俺達がやるべきことは履歴書を書くことではなくて、「プロにサマり易い事実をふんだんに提供してあげること」、つまり冗長なドラフトを作成することなのだ。このドラフト作成が最も頭を使うところだと言っても過言ではない。自分なりに何が強みなのか、どういう仕事をターゲットにするのか、を整理して決定するだけでなくて、自分の会社員時代を振り返って全ての経験を詳細に洗い出していく必要があるか� ��だ。俺の場合、最強の武器・日本語を前面に押すことにした。アメリカで日本語を話せる人口は少ないから、"Stand out from the crowd"のネタとなる。ターゲットとなるポジションはソフトウェア・エンジニアとシステム・エンジニア。それから、2001年から2008年までの7年間にわたって関わった8つのプロジェクトを一つ一つ思い出しながら英語でワードに書き付けて行った。学んだスキルは思い立った時点で書き込む。ここは添削者にも手が出せない箇所なので自分で書いたものがそのまま最終版となる。ここは企業のHRやリクルーターがオンラインで「検索することを意識」して、とにかくキーワードを羅列しまくること。多ければ多い程彼らの検索にヒットする。この作業は本当に骨が折れるが、徹底的に自己分析することがこの先の自分のベースとなる。結果的に頭が痛い思いをしながら一週間かけてドラフトが完成した。ワードでぎっしり6ページ。膨大な量だ。
小児作業療法士カイヤホガフォールズ
1-1-2. 履歴書添削サービス選び
履歴書が重要な国アメリカでは履歴書添削サービスがごまんとある。最初にやるべきことは業者を選定することだ。そのためにまず値段とサービス内容を調査しよう。ぐーぐる。大手は$200から$300くらいだ。最安値では$39.99だった。以下は2009年7月時点で俺が調べた業者の一覧だが、あくまでも参考に。こういう会社はすぐに消えたり新しく出て来たりするだろうから、あなたが就職活動をしようとしている今、俺と同じようにぐぐって調べるといい。
項 | 名前 | URL | サービス内容 | 使 | メモ |
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1 | ResumesPlanet | 安い。履歴書だけだとたったの$74.95。他入れると高い。 | Y | 一番品質が低かった。履歴書だけ注文したのになぜかカバーレターもついて来た。 | |
2 | CareerPerfect | Monster.comと提携。大手だけに高い。履歴書とカバーレターで$299.95。 | N | - | |
3 | CareersPlusResumes | そこそこ安い。履歴書、カバーレター、サンキューレターで$169.85。 | Y | カバーレターの品質は低かったが履歴書の品質は一番高かった。 | |
4 | MyRightJob | めちゃ怪しいが最安値。$39.99で履歴書、$9.99でカバーレター。 | Y | 品質は別としてこの価格で一応やってくれるのはすごい。 | |
5 | ResumeWriters | 大手みたいだ。だから高い。履歴書とカバーレターで$269.95。 | N | - | |
6 | Employment 911 | 大手みたいだ。高い。履歴書とカバーレターその他込で$287.90。 | N | - | |
7 | HalfPriceResumes | 高くはない。$100で履歴書、$30でカバーレター。 | N | 支払い直後、「長すぎる、技術的すぎる」という理由で相手からキャンセルされた。 | |
8 | Rightfootresume | 内容の添削ではなく体裁の変更のみ。$49.95。 | N | - | |
9 | ResumeEdge | Diceと提携。大手だけに高い。履歴書とカバーレターで$259.95。 | Y | 外国人が担当した。フォーマット上のミスも多かった。大学院受験でも使用したEssay Edgeと同じ系列。 | |
10 | AspirationsResume | 履歴書だけなら$79。最初にこの値段で出来るかの判定がある。 | N | 内容的に$79でなく$199だと言われたので使わなかった。 | |
11 | GrandResume | 履歴書だけなら$59。安い。 | Y | 品質は別として値段分の仕事はしたと思う。 |
1-1-3. 履歴書添削依頼
辞職する手紙を書くにはどのように
君にカネがあるなら大手をいくつか使えばよい。品質は大手になればなるほど(ある程度)期待出来ると思う。俺の場合、大学院の授業料でほぼ全財産を使い果たしており極度の金欠だったので大手は一社だけにした。その他は、値段の安いところから適当に選んで4社使用した。大抵の人は一社だけ使って満足しているようだが、危険だ。一社だけではその出来栄えがよいのか悪いのか判断出来ない。必ず複数使用して比較すること。比較することで何が「人によって書き方が違い」、「何が共通(絶対そうする)」なのかがわかってくる。共通のところには彼らに従い、人によって書き方が違うところは自分の感覚にフィットするところを選べばよい。それから、一社ずつ依頼していくのではなく、同じドラフトを一斉に複数に依頼 すること。当たり前だが、書く人によって全く違うものが出来上がる。そしてこれは今後の就職活動に致命的な違いをもたらす。以下に、戻って来た4つの履歴書を紹介しておく。なお、履歴書が戻って来たら必ず疑問点、改善点などを添削者にフィードバックし、コミュニケーションすること。なぜこうしたか、俺はこう考えるがそうでは駄目なのか、等々伝えること。基本的には彼らはプロとしてのプライドがあるためあまりいい顔をしない人もいるが、希望を聞いてくれることもあるし、少なくとも彼らがどういう意図でそう書いたかわかる。
(a) 添削業者 A
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全然駄目。3ページは長過ぎる。履歴書は1ページ、経験10年以内なら多くても2ページにまとめる。面接官が履歴書に費やす時間は一瞬だ。3ページもあったら面倒臭くて読んでもらえない。そして、この場合3ページもありながら内容が乏しい。学歴で始まっているところも俺は好きではないし、何より自分のサマリがない。相手に読ませる前に、自分が何者かを軽く紹介するサマリがないと駄目。更に、俺の技術スキルがないではないか。スキルがなければ、リクルーターの検索に一切ヒットしない。そうすれば企業の目にさらされることすらない。俺のドラフトを誤って理解している箇所も複数あった。とにかく、しょぼ過ぎる。ボツ。
(b) 添削業者 B
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駄目。3ページは長過ぎる。ただ(a)よりはマシ。まず、分かり易いサマリがある。職務経歴についてはプロジェクト毎に箇条書きで書いてある。これも分かり易くていい。たったの$39.99という破格の値段で、俺の6ページにわたるビッグドラフトをわからないなりにも読み、トライしてくれたのには感心する。俺の元の文章をそのまま抜き出した感は否めないが、それでもバリエーションの一つとして勉強になった。ただしワードテクニックはゼロだ。履歴書は体裁にも注意を払うべきである。ボツ。
(c) 添削業者 C
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駄目。3ページは長過ぎる。これも(a)よりはマシ。まずサマリがある。ただしこのサマリは俺にはあまりしっくり来ない。自分ではない人のような気がする。ファンクショナルスキルについてもドラフト通りだ。自分の書いたものが修正されると嬉しいが、そのままだと納得がいかない。職務経歴については、(b)と同じようにプロジェクトベースで箇条書きになっている。これは好感が持てる。俺の感覚に合うらしい。その他、特性や言語など新しくセクションを設けて記述しているが、ちょっと冗長だな。このセクションの存在はワード的に見易くてよいが、字もちっちゃくて見づらい。ボツ。
(d) 添削業者 D
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職員の給与予算を減少させる方法
合格。まず、2ページだった。というより4人のプロエディターに依頼して2ページに収めたのがたったの1人だったということにむしろ驚いた。一番上の名前、連絡先のあたりのワードテクニックも好印象だ。サマリーで開始している。内容も悪くは無い。強み、コアコンピテンシーも彼が考えてくれたようだ。2ページ目に職務経歴が続き、学歴と資格が続く。職務経歴についてはピンと来なかった。7年にわたる職務経歴がサマられ過ぎていたからだ。仕事探しの中で最も重宝されるのは職務経歴なのに、ここが光っていない。サマってくれたのは6ページにわたるビッグドラフトを読んでくれたからこそ出来たわけでそこは有難いが、少なくとも俺の期待には沿わないと感じた。しかし、全体的に体裁は一番ファンシーだと思った。4つの 履歴書からベースとするものを1つ選ぶ必要があるが、これに決めた。
1-1-4. 添削後履歴書修正
自分の気に入ったものをピックアップしたら、次にそれをベースに更に自分の納得がいくように修正して行く。何も問題なし、返って来た履歴書はサイコー、というのであれば良いが、あなたが真剣であればある程、細かいことが目に付くはずだ。なぜ気に入らないのか、どうすればもっとインプレッシブになるのかを考え、よりあなたの理想に近づくように努力しよう。俺の場合、(d)をベースにしつつ、職務経歴が光っていないと感じたので、職務経歴をどう盛り込むか考えた。まず、職務経歴はサマリでなく(a)、(b)、(c)の全てがそうであるように事実を箇条書きベースで書くスタイルの方が自分にはしっくり来ると感じたので、そうすることにした。体裁は(c)を参考にした。内容についてはもう一度考え直し、自分で文章を書き改� ��た。職務経歴を履歴書上で最もインパクトを与えるようにしたかったので、紙面のスペースが必要となり、1ページ目のコアコンピテンシーを省くことにした。基本的に納得がいくように自分で書き上げ、その最終チェックという意味で最後のプロエディターに依頼した。単純に原稿を渡せば彼らは抜本的に添削してしまうから、そうではなく元々こういう履歴書を受け取ったのだが、これこれこういう理由でこう書き直したがどう思うが見て欲しい、問題がなければ修正しなくてもいい、という内容で依頼した。結局、英文も体裁も大した変更がないまま戻って来た。一点目新しいものがあるとすれば"Fluent in English and Japanese."という文章が付け加わっていた。俺は32年間日本育ちで当然アクセントがあるから謙虚な日本人としては大いに抵抗を感じたが、履歴書は最初の入り口だ。最初に大きく見せることでチャンスを大きく出来る。「なんだ、fluentではないではないか」と相手が思うかどうかは知ったこっちゃない。アメリカ人や外国人はそれくらい図々しく誇大妄想的に書いているんだから、日本人もこれくらいアグレッシブにいかないとジョブマーケットで成功しない、というか勝負の土俵に入れてもらえない。わずかな修正に$259.95は高くついたが、電話したりメールしたりで納得がいくまで会話し、彼の意見も聞けたのでこれでいいと思った。こうして、最終版が出来上がった。
1-1-5. 履歴書批評
出来上がった渾身の履歴書を、必ず複数のアメリカ人に見てもらうことは重要な作業だ。一つだけ見せるのではなく、いくつかのバージョンを渡して意見を聞くこと。修正前の履歴書と修正後の履歴書を見せて改善ポイントを説明したりして相手の意見を参考にすること。内容だけでなく、ぱっと見てとっつき易いかなど体裁も気にすること。俺は大学で学生の就職を支援している人やクラスメートに見てもらった。日本で採用活動をやっている友達にも見てもらい、彼らからのコメントも大事にして多少体裁を変更したりした。それからインターネット上には無料の批評サイトが数多く存在するが、全ての批評が添削サービスに結びつけるだけの目的で存在している。無料で善意で批評してくれる程暇人は世界に存在しないことを認� ��すべきだ。俺は3つ程無料のオンライン批評サービスを試してみたがざっくり読んでテンプレートから文章を繋げていったとしか思えないコメントが返って来て最後に「当社の添削サービスを使いなさい」で終わるのが常だった。彼らは絶対に「よく出来ている、修正の余地はない」とは言わない。だから、使ってもいいが話し半分に聞くこと。真顔で受けていちいち依頼していては駄目だ。キミは既にたくさんのプロエディターに添削してもらったんだ。何人に添削してもらおうと、どうせ皆それぞれが違う意見を言う。完成させた最終版に自信を持つべきだ。あとはこれを信じて、もうこれで行くしかない、と。覚悟を決めよう。
1-2. カバーレター作成
カバーレターとは履歴書に目を通す前に自分が何者で、なぜその会社に応募しているか、なぜ会社にとって自分が有用な存在かを簡潔に述べるレターのことだ。履歴書は就職活動を通じて一つの共通のものを使用するが、カバーレターは応募する会社毎にカスタマイズして使用する。
1-2-1. カバーレター作成依頼
基本的にインターネット上にたくさん存在するから、それを参考にしてもいいが、自分の履歴書を添削してくれたプロエディター達は多少なりともあなたのことを知っているのだから、履歴書以外にもカバーレターも合わせてお願いしておこう。多少追加で支払う必要がある。ゼロから作成してもらうと自分の考えと相当違うものになる(とても万人向けのカバーレターになる)のが必須だから、自分で簡単に概要を書いたものも修正してもらうと良い。カバーレターもけちをつけて修正依頼をすれば実質上一人の添削者から複数パターンを作成してもらえる。巧みに利用しよう。いくつか文面のバリエーションがあれば、それらを組み合わせて自分のフィーリングに合ったカバーレターを仕上げることも出来る。俺は、結局4通のカバ ーレターを作成してもらった上で、自分で文章を切り貼りしたり自分の表現を組み込んだりして書き上げた。アメリカ人の友達に何人か見てもらった上で英語表現に誤りがないかも確認してもらった。
1-2-2. テンプレート作成
カバーレターは数種類用意する必要がある。というのは、厳しい就職活動を勝ち抜く為には一通りの戦い方だけでなく複数の角度からジョブマーケットに切り込む必要があるからだ。例えば、俺の場合はまず最強の武器「日本語を使えるエンジニア」という切り札で戦うわけだが、当然行きたい企業の中で日本語を求めている可能性など極めて低い。したがってその場合は完全にアメリカ人達に混じって英語のみで勝負することになる。では、次にあなたのセールスポイントは何だということになる。俺の場合は色々考えた挙句、Java/J2EEで勝負することにした。このへんの自己分析とターゲティングについては後述する。ここでは、「日本語」「Java/J2EE」で勝負するためのテンプレートカバーレターを作成したので公開しておく。どち� ��も最強のIT企業から連絡が来たから品質は信用してよい。
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