MozillaのVPにインタビュー:Firefox Mobileが携帯電話をどう変えるのか : ライフハッカー[日本版]
あなたの携帯電話に、アドオン満載のブラウザは欲しくありませんか?
MozillaのモバイルチームのVP、Jay Sullivan氏は、その実現に向けて毎日試行錯誤しています。米lifehackerでは、Sullivan氏にMozillaの携帯ブラウザ「Fennec」についてや、iPhone、Android、その他のモバイル機器ついて、インタビューしています。
Sullivan氏のチームでは、モバイル版のFirefoxである「Fennec」を開発しました。これは、携帯電話にあらかじめインストールされているバージョンでも、携帯電話にフリーでダウンロードするバージョンでも利用可能です。米lifehackerでは以前に、アルファバージョンのスクリーンショットを紹介していますが、現在ダウンロード可能になっています。これは、タッチスクリーンのWindows Mobileデバイス、ノキアのタブレット、さらにデスクトップでもテスト済みです。
Sullivan氏は8月初めにこの電話インタビューに答えてくれました。
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Lifehacker(以下L):まずは、どんな一日を過ごしているか教えてください。一日の中での時間を使い方を、どうやって分配しているのですか?
Jay Sullivan(以下S):おもしろい質問ですね(笑)。Mozillaの興味深いところは、オープンソースで開発されているプロジェクトだということです。私は今まで、スタートアップから大企業まで、さまざまな会社で働いてきました。Mozillaで働く日々が、これまでの会社と違うところは、世界中の人々がそのプロジェクトの中で働いているということに関係しています。つまり、タイムゾーンが違う人たちがチームにいるので、ヨーロッパの人は今何をしているかな、とか、アメリカ東海岸の人はどうかな、とか、ついついチェックしてしまうので、チームのみんなが同じテーブルにいるという環境よりは、長時間働いていることになりますね。オープンソースプロジェクトを率いている私の典型的な一日は、テーマやビジョンを整理整頓し、チームのメンバーが、それらを自分のやり方でアレンジしやすくする、というのに費やしています。だから、チームのリーダーといって、命令・統率をしているわけではありませんよ。ビジョンを整理することで、チームメンバーの創造性を生み出し、組織としていいものを作っていけるような環境が作れるのです。
L:ということは、9時5時で働いているわけではないんですね。もし、スウェーデンの人があなたと話をしたかったら、こちらの夜7時に、という風になるわけですか?
S:そうですね。Mozillaでの仕事に限らず、グローバル化の現代ですから、そういう風に働くというのが現実でしょうね。私の姿勢としては、時代の流れに乗っかっていくのではなく、時代の先端を行きたいという思いがあります。一日中、机に向かってメールを送受信したり、何か起きたことに対してリアクションをする、というのは安易な姿勢だと思います。なぜなら、私の今までの経験では、いいアイディアというものは、コンピュータに向かっていたり、ただ思考を巡らせているときには生まれないからです。だから、私は時々、これから起こりそうなことを想定して、チームメンバーにも話して心の準備をしておいてもらうことにしています。それが成功に導いてくれるのです。モバイル開発という性質からして、何かが起こってからリアクションを取る、ということになりがちですが、それではいけないと思います。大事なことは、自分の頭で考える時間を取り、そのプロジェクトやプロダクトをどういう風に作り上げたいのかということを固めて、それをちゃんと周りの人に説明できるようにしておくことです。
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L:「Fennec」の機能として、デスクトップ(Firefox)とモバイルブラウザ(Fennec)で、アクティビティを同期させ、それには「Weave」を使うというところが面白いですね。この、「Fennec」とFirefoxの共存について、もう少し説明してください。
S:まずは、私たちがなぜ、二つのブラウザの共存が重要だと考えているかを説明しますね。「Fennec」は改良しつつあるとはいえ、タイプやウェブを操作がしにくい点があります。例えば、パスワードの入力。文字や数字や記号の組み合わせといった、複雑なパスワードを入力するとき、「Fennec」ではスムーズにいかないのです。そこで、何かいい方法がないかと考えたわけです。
いまやPCでFirefoxを使っている人は3億人いて、その人たちのオンラインライフのすべてが、その中にあるわけですよね。それに気付いたから、URLバーや、AwesomeBarができたわけで、さらに、それをモバイルでもやってしまおう、と私たちは考えました。というわけで、「Fennec」を使っているときに、URLの最初の数文字をタイプしただけで、ユーザーがよく行くサイトのリストが出てくるので、そこから選択すればいいわけです。
FirefoxとFennecをつなげるのには、「Weave」がいい働きをしてくれます。これによって、タイピングがスムーズになり、よりポータブルで使いやすくなりました。
デスクトップとモバイルの同期に関しては、もう一ついい例があります。「Get Up and Go」というものです。例えば、デスクトップで地図とフライト確認を見ているとします。でも、もう空港に向かわなければいけない時間で、携帯をつかんで出かけることになりました。そのときに、デスクトップで開いていたすべてのタブも、「Fennec」を使えば、ワンクリックで携帯でも見ることができるのです。私たちは、ユーザーがPCと携帯でどんなことをしているのかを観察しました。その行動パターンから、ユーザーを満足させるプロダクトを作ろうとしているのです。
L:FirefoxとFennec、開発段階での違いはありますか?
S:FirefoxもFennecも、Geckoという同じコアブラウザでできているのですが、Geckoの開発は、Firefoxとサードパーティアプリというよりは、Fennecに必要なものを考えて行っています。例えば、ジャスト・イン・タイムのJavaスクリプト編集など。これがどうやって携帯電話とデスクトップで動くかというと、まず、Fennecはデザインプロセスに入り込むわけです。つまり、FennecはデスクトップのFirefoxと同じエンジンが基礎にあることになります。これはどういうことかというと、 Fennecはウェブブラウザの中で一番互換性があるモバイルブラウザになる、ということです。そしてそれが、私たちの一番の目標なのです。ユーザーに、モバイル用に簡素化されたものではなく、好きなウェブサイトをそのまま見せたいのです。このアイディアが新しくて、他と違っているところは、デバイスを作っているOEM(Original Equipment Manufacturers、商標製品の製造会社)と共同で作業を進めているということです。OEMはもともと、なかなかアイディアを外に出してくれない性質なのですけどね。でも、これは、オープンソース開発と、OEMとの架け橋になるプロジェクトだと思っています。それに、ただ第二の製品を持っているということだけでも、戦略的に会社にとって有利なことだと言えますしね。Mozillaが企業としてどこまで幅を広げられるか、ということは、モバイルの開発にかかっていると考えています。
L:OEMとの共同開発というお話が出ましたが、どのように行っているのですか?モバイル向けの機能は何か、将来的にどんな物を作るか、といったブレインストーミングですか?
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S:ユーザーインターフェイスも含めて、多岐にわたりますね。デザインはオープンでやっています。Fennecの最初のデザインをしている頃、煮詰まってしまったのですが、wikiページでそのことを知った、世界中の人からコメントが届きました。OEMの一つであるサムソンは、wikiに載せた初日からコメントをくれています。ノキアとも深く関わっていますよ。ノキアのインターネットタブレットは数年にわたり、Geckoベースのブラウザに入っています。というわけで、ユーザーインターフェイスから、Javaスクリプトエンジンの最大化まで、幅広く共同開発しています。Mozillaにとって重要なものは、だいたいコードに関することなのですが、OEMにコードをオープンな形で開発してもらうというのは、いいことだと考えています。オ� �プンソースの透明性を示すことができますし、より多くの人に見てもらった方が、バグを直しやすいですからね。
L:OEM先の一つには、Appleもありますよね。現在、モバイルSafariはモバイルブラウザのリーダーとされて注目されていますが、モバイルFirefoxがAppストアで売られるようになるとは思えません。その辺の話し合いは行われているのですか?
S:AppleのSDKの契約条件は、Appストアでサードパーティアプリを売ることを禁じています(翻訳アプリを含む)。つまり、Javaスクリプトが入っている他のブラウザはダメ、ということです。だから、FennecはAppストアで売ることができませんね。
L:じゃあ、現段階ではこれ以上先に進まない問題だということですね。
S:iPhoneのSafariはあれでいいと思いますよ。Mozillaとしてのゴールは、選択肢を増やし、イノベーションを推進して、ユーザーが使いやすいウェブを作ることです。iPhoneユーザーは、Safariを通してのウェブに満足しています。たいていのスマートフォンには、 Symbian、Windowsモバイルが内蔵されているのですが、iPhoneのウェブ体験がすばらしいのであれば、他のスマートフォンを持っている人にもそれを体験させてあげたい、そのためにはどうすればいいか、ということを考えています。iPhone以外のスマートフォンのプラットフォームに関しては、マーケットシェアとデータのデータの使用量に大きなギャップがあることがわかっています。たぶん、SymbianやWindowsモバイルは、そこまで使いやすくはないのでしょう。Mozillaチームは、オープンなので、ユーザーの声を聞くことができ、そういう点を改良していくことができると思っています。
L:GoogleはAndroidの開発者に、SDKというよりはむしろNDK(Native Development Kit)でアクセスできるようにしていますが、Fennecの開発者に対しても似たようなキットを提供するのですか?
S:いまのところ、それが可能かどうかを検討しているところです。Fennecは、計算機やゲームとは違って、しっかりしたアプリです。Firefoxに持っていって、ちゃんと動くかどうかを確かめないといけません。あと数ヶ月すれば見えてくると思うのですが、将来的にはAppストアで扱われるようになって欲しいんですけどね。技術的には可能なことなのですが、実現するには他にもいろいろクリアしなければいけない問題があるので、今は何ができるかを、一つ一つ考えて実行していくのみです。
L:モバイル機器には十分なメモリが積まれていないので、限られた容量をどう使うかが重要になってきますよね。メモリを食わないサードパーティブラウザはどうやって作るんですか?
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S:近年、デバイスのメモリ容量は大きくなってきています。少し前までは、16MB程度だったものが、最近は128MBや256MB、またはそれ以上になってきていますよね。だから、メモリ問題は改善されつつあるのですが、それでもMozillaは、高性能なデバイスで使われるアプリを目指しています。満足のいくブラウザ体験をユーザーに提供するために、Firefox 2からFirefox 3へのアップグレードでは、メモリ消費量を減らすことに成功しました。3から3.5でも同様です。これをモバイルに持っていった場合には、さらにメモリを有効に使うブラウザを開発しました。
複数のタブを開いたときのことを例に挙げましょう。デスクトップでは、ついたくさんのタブを開いてしまいますよね。Fennecでも同じようにタブを開きたいけれど、見にくくなるし、メモリも食うので躊躇してしまうでしょう。私たちのチームには、「メモリプレッシャー」というコンセプトがあるのです。もしFennecがメモリをたくさん使っていることに気付いた場合は、メモリを食っている一部のアプリをキャッシュに移動させたり、タブをbitmapとして保存したり、一番アクセスの少ないデータを一時的に消したりします。その結果、Fennecがメモリの節約を始めたことをユーザーが気付かないで、複数のタブを開いたままにできる状況を作り上げました。なので、Fennecはメモリをに上手に使っていると言えるで しょう。
L:Fennecは「TraceMonkey」と基本的には同じJavaスクリプトを使っていて、携帯電話用に変換されたものと見ていいのでしょうか? それとも、違いはあるのでしょうか?
S:基本的には同じです。両者が同じエンジンを使っているというのは、便利なことでもあります。HTMLもCSSもJavaスクリプトも同じもので、TraceMonkeyに使っています。Intelとの違いは、編集をするときはARMアーキテクチャ用に最適化することが挙げられます。TraceMonkeyの技術は優れているので、デスクトップに限らず、モバイルでも生きてきます。
L:現在、Firefoxはウェブブラウザの27%を超えるシェアですが、ユーザーにとって壁となるのは、スタンダードでないものを使う、ということだと思います。見慣れたInternet Explorerではないものをまずダウンロードし、それをインストールするということに抵抗がある人もいるかもしれませんね。この傾向は携帯電話に関してもあって、デバイスを買ったときについていたものでいい、というユーザーが多いのではないかという懸念はありますか?
S:実際、携帯電話でのダウンロード、インストールは、PCのように気軽にはいかないかもしれませんね。PCだと、ほとんど衝動的に緑のボタンをクリックして、新しいソフトウェアを試す人も多いことでしょう。
L:デスクトップ環境では、パラグラフを読む前にFirefoxのインストーラーにたどりつけますが、モバイルでは、それぞれのサービスにもよりますが、インストーラーまでの道筋が長いかもしれませんね。
S:その通りですね。しかしここは、Mozillaというブランドの信頼度から、Firefoxのモバイル版だったらダウンロードしてみようと、ユーザーが感じてくれることを信じています。また、最近の傾向としては、AppleでもAndriodでも、サードパーティアプリをダウンロード、インストールすることに、抵抗がなくなってきていると思います。アプリを作る側からすると、うれしいことですね。しかしまだ、ハードルはあるので、ユーザーができるだけ簡単にインストールできるようなものを作っていきたいです。
L:Fennecnの開発はどの程度まで進んでいるのですか?次にはどんなものがくるのでしょうか?別のプラットフォームでも動く、新しいバージョンがリリースされるには、何が必要なのでしょうか?
S:ノキアのMaemoプラットフォームはタブレットで使われているのですが、これに関してはベータを2回リリースしました。少なくとも、あと1回ベータのリリースがあるでしょう。これがうまくいけば、今年中に一般リリースに至ります。Windowsモバイルでも同じで、もう1回アルファのリリースがあって、ベータに移ります。あと数ヶ月でMaemoを出荷することになり、Windowsモバイルもすぐに続きますよ。Symbianも現在開発中です。これは、プラットフォームでは大きなシェアを誇りますが、ブラウザではそうでもない分野です。Symbianは来年には形になるでしょう。Android用も開発中です。それから、Appleの気が変わってくれたら、また違った動きが出るでしょうね。
L:他にはどんなツールやソフトウェアを使って、一日を管理しているのですか?
S:Mozillaはバグデータベースの中に存在しているようなものです。このソフトウェアはこんな風に動く、もっとこうするべきだ、ソフトウェアがリリースされたからパーティしよう、とか、そういう感じですよ。IRCのチャットをみんなが使っていて、リアルタイムで働いている、というのが他と違うところかもしれませんね。
個人的にどんなツールで一日を管理しているかというと、「Things」を使っています。いいアイディアを出す手助けをしてくれるツールが好きですね。それから、マインドマッピングもよくするので、「MindManager」も使っています。最近は、PC中心のアプリからクラウド系に移ってきています。ドキュメントはオンラインで書くし、オフラインのものから離れてきている傾向があります。
S:最後にもう一つ、お話ししておきたいことがあります。Fennecがユーザーにとってどういう存在かというお話はしましたが、開発者にとってはどうなのかということには触れていませんでした。いま、モバイルで起きていることは、デスクトップではこの5年の間に起こっていることです。ユーザーへの負担が軽い、ウェブブラウザに移行してきていますよね。Fennecは最新のブラウザエンジンが搭載されていて、オフラインストレージや、「web workers」という複数のアプリを速く動かすツールのサポートがついています。これらの技術により、最高級のHTML5ベースのアプリを作ることに成功しました。
さらに、私たちは、デバイスでできる最大限のことを引き出そうとしています。「Geolocation」がいい例ですね。数行のJavaスクリプトコードで、ウェブアプリの開発者はロケーションを踏まえてアプリを動かすことができるようになりました。これは、Firefox 3.5のGoogle Mapのサポートで見られますよね。Fennecを使えば、これと同じことがモバイルでできます。ロケーションはモバイルの方が大事ですよね。また、デバイスのカメラや他のAPIもロケーションを認識できるようなものを作っています。
ビジョンとしては、ウェブがアプリの開発のプラットフォームだということです。時間はかかりますが、私たちはモバイルでのウェブ体験を、すばらしいものに使用としています。他に開発していることは、ブラウザのアドオンの実装です。Fennecは、モバイルとしては初めて、真のアドオンをサポートするデバイスになるでしょう。今のところ、30ほどのアドオンができているのですが、まだ発表はしていません。アドオンはこれからもどんどん使われることになると思っています。そして、開発者たちがいいアドオンを作れる環境を提供したいのです。
ちょっと長かったですが、いかがでしたか?「Fennec」という、なんだかエキサイティングなモバイルブラウザを試してみたくなりますよね。それから、 Jay Sullivan氏の、ユーザーと開発者の両方にとっていい環境を提供しようとする、リーダーとしての姿勢も見習うべきところがあるかもしれませんね。
Kevin Purdy (原文/訳:山内純子)
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